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2005/10/26

漫画師弟

「漫画家 師弟関係」で検索にかかってました。どなたの事を調べたかったんでしょう。

徒弟制度というのは、職人仕事ではよく見られる教育システムですが、古臭い、というイメージもあり、現代の若者にはあんまり歓迎されないようです。

代わりに学校が流行るんですよね。

漫画の場合の徒弟制度というのは、あるようでいて、ないような。

僕はナベ先生の弟子で、ナベ先生はあおきてつお先生の弟子ですが。これは弟子の方が師匠と慕っている部分が大きいです。システムとして徒弟制があって、暖簾分けという形で独立していくわけじゃないので。別に誰かの弟子にならなくても、新人賞でも取ればプロになれるんですから。

ですが、誰かの弟子になることにメリットがないか、と言うとそんなことはありません。むしろ非常に有益です。

何しろ漫画の作業というのは、ノウハウの塊ですから。こう聞くと普通は絵の事を連想すると思いますが、実はそれよりでかいのが話作り。

普通話作りといっているのは、実はプロット作りに過ぎなくて、考えた筋を画面構成してページ内に収めるネームの作業は、非常に特殊な作業です。ここのところで師匠がいるのがでかい。

例えば料理の美味い不味いは誰でも感想を述べられますが、「なぜ」不味くなってしまったか、「どうすれば」うまくなるかという事は、塩加減や火加減という物を習得している料理できる人じゃないと、上手いアドバイスが出来ません。それと同じ。

このコマのせいで悪くなってる、ここをこう直せばこう変わる。自分が描ける人ならば、そういう物凄い具体的なアドバイスをしてくれる。さらに言うと、周りの人も大きい。

先輩アシスタントが揃っているような仕事場なら、すでに新人賞ぐらいはクリアしているレベルの人が、何人もいる。具体的なアドバイスをいくつも聞ける。マンツーマンだと言われたままに直してコピーになっちゃうかもしれないけど、いくつも意見が聞ければ、自分に一番合うのはどれかと考えられる。

さらに先生のお友達のプロからも、意見を聞く機会があるかもしれません。自分を磨くためには、砥石はきめ細かければきめ細かいほどよい。そういう人にたくさん出会えるかもしれない。

逆に、若くして「新人賞一発デビュー即連載」を勝ち取ったはいいけど、この辺磨かれてなくて細かいことが出来なくて。話の筋はおいしいネタてんこ盛りにしてるんだけど、塩加減火加減が出来ずに素材台無しで、尻すぼみというケース。よく見かけます。

もったいないですね。

というわけで、漫画における徒弟制度のメリットについて、もっと考えてみるべきだと思うのですが。唯一つ、考慮すべき点が。

漫画家の「先生」って、別に何か教えてるからじゃないですからね。作家を先生と呼ぶのは、昔々、思想啓蒙とかしていた頃の名残じゃないかな。漫画家の場合はさらに小説家から転じてって感じだから、敬称以上の意味はないわけで。

「先生」だから必ず面倒見てくれると思ったら、大間違い。教えるの下手な人もいるし、教えること自体面倒臭くて嫌いという人もいるし。

教え上手で面倒見のいい「先生」に、上手く出会える運も重要。

ナベ先生は一見、教え上手じゃないですが、仕事場からかなりの確率で漫画家が巣立っているので、いい「先生」だと言えるでしょう。他の人はどうだか知らないけど(笑)、オイラはとにかく盗めるものは盗め、と思ってたし。

絵柄とか作風とかはさっぱり似てないけど、師匠の影響は絶大だったのです。特に精神面で。みんなもそっちだったのかな。やる気の出る仕事場だったんですよね。

世の中には「反面教師」もいるって噂もありますが(笑)。そっちじゃなくてよかった。

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