銀河市民
「銀河市民」(1957年。ロバート・A・ハインライン。ハヤカワ文庫)ハインライン強化キャンペーン(僕に)、継続中。
現在流通しているのは、新装版です。図らずも前回「人形つかい」で書いたとおり、表紙が今風になっている時点で、ずいぶん印象が違います。かっこいい~!
この本の巻末解説に書いてあったんですが、ハインラインさんは子供向け、いわゆるジュヴナイルと呼ばれる作品を結構書いているそうです。で、その一覧が載っていたんですが…なんだ、要はこれが好きだったのか! 漫画っぽい印象も、これで納得。冒険物をたくさん書いているからだ。
ただ、子供向け、というと日本では、物凄く子供っぽくなってしまいますが、向こうの物はそうでもないようです。ハインライン氏のジュヴナイルのシリーズも、言われるまで気がつかなかった。
欧米では子供は「半人前の大人」で、だから日本に比べて躾が厳しい、という話を聞いた事がありますが。そういう意識の違いからなのでしょうか。あんまり内容で、手加減する気はないみたい。ハリー・ポッターにもそういうとこあるしな。
でもその方が面白いのでグー。
子供のころの夢やロマンと、大人でも楽しめる重厚なドラマが絶妙なブレンド。まずタイトルからしていいですね、「銀河市民」。
自分で最初に買ったSFはハインライン氏の代表作の一つ「宇宙の戦士」なんですが、評判知ってて買ったのではなく、タイトルとカバー絵に惹かれて。何しろ「宇宙」で「戦士」なのですよ。(カバー絵にはパワードスーツ)
そろそろオレも子供じゃないぜ、と難しそうな大人の本が置いてある所に向かった、小学生の頃のオイラですが、所詮その程度。ちなみにこの年になってもその感覚は残っていて、タイトルに「銀河」がついてる時点でちょっと面白そうだな、と(笑)。これが子供の夢やロマン。
ところがここからが一味違う。日本で「宇宙」だの「戦士」だの「銀河」だのとついていても、あんまり意味なくただかっこいいからという場合が多いのですが、ハインライン氏はちゃんとテーマがあるのです。
前述の「宇宙の戦士」でも一人の新兵が本当の戦士になる顛末を書いていて、一人前の男とは、という著者のメッセージが感じられますし、この「銀河市民」では。
奴隷として登場する幼い主人公が、成長して行って凄い出世を成し遂げるんですが、その過程で、社会と市民の関係について考えさせる構造になっている。社会に対する個人の権利と義務について。
それをまともに説教臭く書いてあるのではなくて、そっと忍ばせておく所が重厚なドラマ。
かつ、テーマだけではなく、キャラクターもしっかりしていて、銀河を渡り歩いての冒険となれば。そりゃ面白いですって。
というわけで。たっぷり堪能。
ジュブナイルのシリーズ、全部読み返してみようかな。本棚のどこかにいくつかあるはず……。
読んだことないけど、「宇宙怪獣ラモックス」というのも、そそるタイトルだなー(笑)。
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