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2005/07/10

渇きの海

なんとなく、ふと読み返してみて、やっぱり面白い。「渇きの海」アーサー・C・クラーク著、ハヤカワ文庫。1961年の作品。

初めて読んだ時、この作品に思いっ切り騙されました。SF設定で。読み終わるまでそれが嘘だという事に、まったく気がつかなくて。

月で遊覧船が事故にあう話なのです。特別な船で、月の砂はながーい年月の間に物凄く細かい塵にまで砕けていて、液体のようになっているので、その上を走れるように作られた。この「液体のように細かい塵」がSF的嘘なんだけど、他が余りにしっかり描写されているので、気がつかないまま。

読んだ後、「いやー、月って怖いところだなあ。こんな塵があって……あれ? なんでアポロの時には、問題にならなかったんだ?」と、ようやく気づいたのでした。クラーク氏の恐るべき描写力……オイラが間抜けなだけ?(笑)

SF設定といえば、SFはわりとその設定がキモ、みたいな所があって、すごいアイディア使ってる作品が評価される場合が多いですが。オイラあんまりテーマとか設定とかにピンと来ない口で。それよりドラマとして盛り上がっているほうが好き。

だもんで、アーサー・C・クラークといえば「2001年宇宙の旅」とか「幼年期の終わり」とかの方が有名ですが、こっちの方が好きなのです。

要は映画で言ったら「タイタニック」とか「タワーリングインフェルノ」とかのパニック物なんですよね、この話。たまたま舞台が月。SF的知識もそんなに要らない。月が真空だ、ぐらいなら、もう常識だし。

それよりも、個性豊かな登場人物たちが織り成すドラマがメイン。サスペンスありのちょこっとロマンスありの。それにどんどん引き込まれてしまう。

自分でも、SF漫画を描くならこういう風に描きたいなあ、と思っているのです。人間ドラマがしっかりしていれば、SFにあんまり興味なくても読めるし。せっかく描くなら、いろんな人に読んでもらいたいし。

というわけで、あんまり普段SF読まない人にもお薦めですよ! …とプッシュしてみたら。あれー? 絶版? 古本でしか見つからない。しょぼーん。

追記
なんと嘆いてたらすぐに新装版が出ましたよ!! やったー!! 面白いものはちゃんと残るんだね!! という事で応援中です。

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コメント

乾きの海はクラークが考案したSF設定じゃなくて、月面の状態について当時(アポロ以前)提唱されていた仮説の1つですよ。実際にアポロが月に行ったら残念ながら間違いであることが判明したって時系列です。

投稿: KK | 2012/10/28 02:40

なるほど、仮説から話を作ったということですね。アポロの着陸船の足は砂地に対応しているように見えないから、あの頃にはもう分かっていたということですか?
 
どちらにしろ僕はすっかり疑いもせず読み終わったので、その描写力がすごいなあと思うのです。

投稿: かわせ | 2012/10/30 01:46

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