« 追悼 橋本選手 | トップページ | 宇宙はロマンに満ちている »

2005/07/16

ハーメルンのバイオリン弾き 35

ハーメル回顧録の35。前回まではカテゴリー、ハーメル回顧録でどうぞ。

「人はね…自分の"力"を、愛しい人のために使うことができたら…後悔など、しないんだよ」

かくしてスフォルツェンドの物語決着。

ぱっと見、これだけ絵柄も違うし、話の進め方も違うし、作風から言ったらまるで師弟関係が見えない僕とナベ先生ですが。何を描きたいのか、何が重要だと思っているのかという、根っこの所で繋がっている。

要するにこの手の話を描きたいわけで。

32巻の回でも書いたとおり、このクライマックスというのは、当初の予定通り。ホルン様が十字架に法力を込めていて、それと一緒に詰められた思いが最後に助けてくれて、リュートにもみんなの思いが通じて。

で、ベースを倒すんだけど、リュートの体はもう限界で、みんなと一緒に昇天してしまう。最後にフルートに思いを伝えて。

で、それを二人で煮詰めていきながら、やっぱりうるうる来ていたのも、書いたとおりです(笑)。ほんとに、二人とも好きなんですよ、こういうシーン。やっぱり漫画は気持ちや思いの深さを描くのが一番だ、と。

客観的に言えば、当然一番は人によっていろいろ違うんでしょうけど。でも自分達にとっては、一番はそれ。気持ちや思いを描き切らなかったら、漫画なんて面白くない。その信念の結実が、このシーンだといえるでしょう。

死んでるはずのリュートが普通に動けちゃったりとか、ホルン様の幽体がクラーリィ持ち上げちゃったりとか、真面目に考えたらありえない奇跡がバンバン起きちゃってますが、それもそれだけのエネルギーが思いには込められているんだという事で。

ともすれば漫画は、御都合主義になりがちです。「それが”想い”ってヤツだよ…ベース…」というリュートの言葉も、使い方間違ったら凄い言い訳になってしまう。それを防ぐのが、作者の信念だと思うのです。

そのほうが受けがいいから、ぐらいのネタとして取り扱ってたら、どっか隙が出来て読者に看破される。いや、無理矢理なのは最初から否定出来ないんだから、突っ込まれるのは承知の上。

でも根っこにエネルギーが込められていれば、寓話として成立する。読んでる方が現実には無い事だと分かっていても、気持ちの深さが伝われば、これは物語上の技法、出来事のデフォルメなんだと。伝えるために大げさに描いてるんであって、伝えたいのは根っこの所だと分かってくれるはず。

そこまで行けば、現実ではありえない事が描いてあるというのが、逆に物語の素晴らしさになるんだと思うのです。人を思う気持ちがどれだけのエネルギーを持ち、どれだけの奇跡を起こすのか。

現実の世界でも、思いの深さが不可能と思われていたことを可能にすることはあるわけで。そういう人間賛歌を描きたいのだ、というのはナベ先生の口癖でした。

その気持ちはハーメル全体にずっと貫かれていて、そしてそれが最終決戦へと。この巻から始まるケストラーとの対決。

としてとうとう長い物語も、最終局面を迎えるのです。

|

« 追悼 橋本選手 | トップページ | 宇宙はロマンに満ちている »

ハーメル回顧録」カテゴリの記事

コメント

 そろそろプレミア化したラスト2巻、36・37巻ですね。一体最後はどのような気持ちで望んだか気になります。楽しみに待っております。

投稿: タヌキチ | 2005/07/17 08:49

そう、36、37巻って同時発売で、すぐ品切れになってプレミア付いたんですよね。それを聞いた時にはびっくりしました。

プレミア付くより、ちゃんと刷っといてくれた方が、読者、作者、出版社とみんな得をして、三方丸く収まったんですけどねえ(笑)。

投稿: ひろし | 2005/07/17 15:51

はじめまして。現在25歳になる、『ハーメルン』のいちファンです。

ハーメルンは単行本全巻持ってて、今でもたまに再読します。『シェルクンチク』も集めてますし、最後まで応援するつもりです。


>ともすれば漫画は、御都合主義になりがちです。「それが”想い”ってヤツだよ…ベース…」というリュートの言葉も、使い方間違ったら凄い言い訳になってしまう。それを防ぐのが、作者の信念だと思うのです。

『ハーメルン』の最大の長所は、何と言っても“説得力”だと思います。
「ベースはリュートの身体を使ってることが仇になって負ける」という設定はあまりにお約束で、それをそのまま描いても箸にも棒にもかからないでしょう。
でも、リュート編でベースの圧倒的な強さ(読んでて「こんな奴どうやって倒すんだよ!!」と思わず叫んでしまいました)が描写され、最終決戦でもクラーリィの手足が全部吹き飛んでリュート慕ってた子供達が皆惨殺されて、それでもクラーリィが戦い続けて、それで遂にリュートが復活する!
ここまでの展開をあの絵でやられたら、もう納得するしかないですよ。「ベースに勝つにはそれしかない」って。どんな途方も無い奇跡が起こっても、全然ご都合主義に見えないんですよね。
ここまで「奇跡」を説得力溢れる描き方できるのは、日本の漫画界広しといえどもそういないんじゃないでしょうか。

こんな素晴らしい作品に出会えて、更にその続きを今も読んでいられる僕(というか同年代のハーメルンファン)は幸せ者だなぁ、と最近シェルクンチクを読みながらしみじみと思います。
以上、まとまりの無い駄文、失礼いたしました。

投稿: ごぜん | 2010/01/02 21:44

そう言っていただけると、手伝う身としても嬉しいです。
ナベ先生も喜ぶと思います(^^)/
これからもよろしくお願いします。

投稿: かわせ | 2010/01/03 00:13

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/46606/4705116

この記事へのトラックバック一覧です: ハーメルンのバイオリン弾き 35:

« 追悼 橋本選手 | トップページ | 宇宙はロマンに満ちている »