ハーメルンのバイオリン弾き 34
ハーメル回顧録の34。前回まではカテゴリー、ハーメル回顧録でどうぞ。
「もったいないねー」というのが、当時アシスタントの間で囁かれていた感想。
何がかと言うと、「スフォルツェンド聖十字軍王家親衛隊」が。漫画における絵の力というのは大きくて、ポンと出てきたインパクトで、物語のイメージが、わっと広がったりする。
手伝っててみんなが感じたのが、こいつらこれまで結構なドラマがあったんだろうな、という事。でも、もうお話は最終回に向かって突っ走っているから、その辺は触れることなく、みんなここで死んじゃう。それがもったいないね、と。
特にリーダー格のサックス君。片目に大きな傷はインパクト絶大。こいつ絶対クラーリィとライバルで、大神官の座を争ったんだぜ、と勝手に裏のドラマが出来ちゃう。
これもリュートの物語が、ちゃんと伏線張られていた効果です。過去のリュートの話で、ちゃんとリュートを慕う子供たちが描いてあったから。だから、いきなり出てきても「ああ、あの子達が!」と、納得できる。そして描かれていない部分にも想像が及ぶ。
これがいかにもこの後使いますよ、というタイミングで伏線張ってあったら、効果薄。手順としては間違っていないけど、想像力を掻き立てる、という所までは難しい。
伏線を張る、という言い方もちょっと違うんですよね。物語の作り方のレシピやノウハウとして、手順として伏線を張るんじゃないのです。一生懸命ドラマを考えて、想像力を膨らませていけば、後ろはこうなってるんだから、自然と前はこう、という感じ。
漫画の種類によって、違ってくる部分はありますが、ハーメルのような感情的なクライマックスを描く物語の場合は、そういう感覚で作品に当たるのが重要なんじゃないかと思います。その部分をナベ先生から学びました。
溢れる気持ちがクライマックスなのに、描いてる方が醒めてて打算だらけだったら、そんな嘘すぐばれちゃう。素直に真っ直ぐ描かないと。キャラクターを駒ではなく、ちゃんと、架空の存在でも一人の人間として扱ってやれば、感じていることが行動に結びついて、自然とドラマが出来ていくのです。
特にスフォルツェンドの物語は、ハーメルの中でも長い間語られてきたエピソードです。クラーリィにもフルートにも、それまで名も無きモブの子供たちだったクルセイダーズの面々にも、積み重ねてきた思いや行動がある。
それがこの34巻に結集している。そうして分厚いドラマになっていく。その中にはかなわなかった哀しい思いもあるけれど。
でも、その思いが、リュートの心には届いて、以下次号。
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