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2005/06/08

ハーメルンのバイオリン弾き 30

ハーメル回顧録の30。前回まではカテゴリー、ハーメル回顧録でどうぞ。

それは年末進行を終わらした日のことでした。年末は印刷所がお休みになってしまうので、いつもより締め切りきついのです。

その日はエニックス出版部の忘年会がある日だったのですが、さすがに疲れていたので、僕は留守番。パーティでタダ飯食うより、しばしの休息を選んだわけ。しかし、僕の行かなかったパーティ会場で、事件は起きました。

ヘロヘローンとしながらみんなの帰りを待っていると、ナベ先生が帰ってきて開口一番、「もう、終わらせてやる!!」

激高するナベ先生、オロオロする連れのアシ達。ナベ先生がこんなに怒るなんて珍しい。と言うか、ほとんど無い。切れて爆発なんて、仕事場ではむしろ僕の役どころです。何があったのか聞いてみたところ。

パーティ会場で顔見知りの編集さんと話している時、言われた一言。「ハーメルも、もう、長いですよねえ」

これがナベ先生の逆鱗に触れたらしい。「そんなに不満があるなら終わらせてやる! やろうと思えば来月でだって出来るんだ! 北の都を前にして『さあいくぞ!』で…」すごい剣幕。

僕はその場にいなかったし、公正を期して推測で断定はしませんが。実際「長いですよねえ」と言う場合も、「だらだら続けやがって」なのか「すごいですね」なのか、両方の場合があるわけだし。その前後の細かいやり取りとか、言ってる様子とか見ないと分からない。

でもはっきりしているのは、目の前のナベ先生が物凄く怒っていて、ナベ先生には非常に失礼に聞こえたらしいということ。まさか本当に連載放り出すとは思えないけど、ここは何とかなだめないと。

で、これを機会に、前々からちょっと感じていたことを伝えてみたのです。

そろそろハーメルも30巻、確かに長期連載です。終わらせなければいけない時期は、確実に迫ってきている。だったらちょうど年末年始の休みがあるんだし、これを機会に、ここで思い切って最後まで展開を決めてしまったらどうか。今まで張った伏線を洗い出して、ちゃんと閉じれるように。

実際に単行本だって売れていて、ずっと楽しみについてきてくれている人がいるんだし、その人たちに最高のエンディングを見せなくては。ガチャガチャ言う人なんか関係ない。責任を持たなきゃいけないのは、そのお客さんに対してなんだから。

と言うわけで、年末年始で最後までの物語の構成をしました。細かいアイディアやエピソードの足し引きはありますが、最後に至る流れはこの時点で、「この回でこれをやる」というレベルで決めました。それが30巻冒頭でのこと。ここからラストに至るまでのカウントダウンが始まったのです。

この巻でいうと、フルートの「聖女としての役割」だったり。あれを描いた時点で、何回後にこれを受けてこういうエピソードが、というのは決まっていました。

また、この時から僕は、完全にブレーンとして働くようになったのです。今までは「困った時の相談相手」でしたが、「原案協力者」として。

プロットを切るときからネタ出し協力をし、ネームも見て、意見をして。実際採用されたアイディアとしては、リュートの最後とか、他いろいろ。

だからハーメルがちゃんとしたエンディングを迎えて、それが結果に反映されたということを知った時は、確かな満足を覚えました。

災い転じて福となす。ハーメルの終わり方を決めた大事件でした。

この流れで、次の「PHANTOM; DEAD OR ALIVE」の時に、名前が出てるわけですね。あっちも上手くいけばよかったんですけどねえ(笑)。

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コメント

そ、そんな事があったんですか!∑(-。-;) でもこの事があったからこそ、ハーメルンはあのエンディングを迎えることが出来たのですね。これも何かの縁でしょうか。それにしても衝撃的な内容でした。

投稿: タヌキチ | 2005/06/08 22:13

噂に聞く話では、こういうすれ違いから不満が膨らんで、中途半端に終わらせちゃったケースもあるみたいですよ。

紙一重でした。

投稿: ひろし | 2005/06/09 02:05

お久しぶりです。やさきです。
今回の内容、かなりショッキングでした・・・。
もしハーメルンが途中で終わってたら、
編集部に殴りこんでたかもしれません。
あの大団円で終わって、ほんとに良かった・・・。

前回の内容ですが、オカリナの死は、
妹と涙ぼろぼろになって読んでましたよ~。
サイザーと一緒に「オカリナ、死なないで!」
って叫んでました。
リュートの死の時もそうでしたけど、
ハーメルンは、ほんとに心に訴えかけてくる
シーンが多いですよね。
だから、今でも好きなんだろうなぁ・・・。

投稿: やさき ゆう | 2005/06/13 21:44

ありがとうございます。作者に代わりお礼を(笑)。

僕とナベ先生が、漫画の話が合うのも、そういう部分です。作風はまるっきり違いますからね。

どういうふうに描けば、気持ちに訴えることが出来るのかという点で、勉強させてもらいました。

投稿: ひろし | 2005/06/14 04:51

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