見えなかったもの
漫画で交遊録第10弾。「アークザラッドⅡ 炎のエルク」。(西川秀明著。1997No.16~2001/8。スクウェアエニックス。SCE)
だから、同じ雑誌で連載している漫画を同時に手伝っているというのが、異常事態なんですが(笑)。でも、その異常事態で手伝いに行ったことによって、気付けたことがあるのです。ちょうど4巻、エルクの子供時代のエピソード。それを手伝っている時に。
当時の西川先生の仕事の仕方は、背景の下書きも本人がきっちりやってアシスタントに回す、というもの。その下書きも、もうなぞればOKぐらいのクオリティー。で、それを描いてて思ったことが。
「俺、上手い?」
いや、勘違いなんですよ。なぞってるだけなんだから(笑)。でもこれには、もう少し細かく説明しないといけないことがあって。
実は「Z MAN」の時にもそう感じた一瞬があったのです。炎の谷のとこのでかい見開きを任された時。同じ様に、もうなぞればいいだけだった。出来上がった物を見ると、結構上手いじゃん俺、と。
で、このアークの時にも。さらに、時間が迫っていて、もうこの小さいキャラは任せた、と言われて。いいんですか? と戸惑うオイラに西川先生、「大丈夫だよ、川瀬君線きれいだから」 あれ?
自分は絵とお話で言ったら、絵に弱点が、と思っていて。絵に関係して誉められるなんてない、と思っていた。何とかしなくちゃ、と悩んでいたのですが。
当然プロにはもっときれいな人が大勢いるとしても、線に関してはとりあえず大丈夫だって事? じゃあ何が問題かって言うと……。要は西川先生が下書きで出来ていることが、全然出来てない。だからなぞった絵が、いつもの自分の絵に比べて、びっくりするぐらい上手く見えるのです。
さらに別の機会に、西川先生とそんな話に。「そう、観察力なんだよね。だから例えばこういう絵の時……」 ああ!
手の技術じゃなかったんだ。脳の中でその回線が切れてる! そこを高めないと駄目だったんだ。
人間て、見えてるようで見えてない。特に自分の弱点は見えない。と言うか、見えてたら直すから、はなっから弱点にならない。見えないから弱点、弱点だから見えない。クローズドサイクルになってるのです。
他人が見たら簡単なことなのに、本人には分からない。それを言葉で伝えても、感覚自体が育ってないから、ピンとこない。絵の下手な人はいつまでたっても下手、話の下手な人はいつまでたっても下手。どこかで見えるようになるきっかけが来ない限り。
だから、他人が漫画の批評してるのを聞いてると、面白いですよ。自分の得意な所で、凄く文句言うから。やっぱり得意な所は敏感で、よく見えてるのです。
西川先生のおかげで、自分の弱点がはっきり見えた。それ以降、そこを高めるためのトレーニングをして、少しはましに。
ただねー。もともとの基本値が低いから、直るって言っても亀の歩みなんですけどねー。間に合うのか、俺?
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