ハーメルンのバイオリン弾き 26
ハーメル回顧録の26。前回まではカテゴリー、ハーメル回顧録でどうぞ。
この巻一番の大仕事。ベースがリュートの背中をひん剥くところから3ページ分のセリフ。オイラが考えた。いつものナベ先生の台詞回しと、ちょっとテンポが違うのはそのせい。「こういう意図で、なるべく難しい単語を使って…」と言われて捻り出したのです。
基本的に、僕が作画でエース格のスタッフだったことはありません。まず溝渕さんが、その後は佐々木君だったし。それでもナベ先生が僕をチーフとして扱ってくれたのは、こういう仕事をしていたから。元々ブレーン的な仕事をしていて、それはこの後ますます強まって行くのです。
さてリュート編、この巻で終結するわけですが。この回顧録を書くために久々読み返していて、思わず涙が出ちゃったよ、リュートがフルート助けるとこで。
ナベ先生とオイラの作風は、まるっきり違います。普通これだけ長く一緒に仕事をしていたら、もっと似てくるものなんですが。じゃあ影響まるっきりないのかと言うとそれも違う。
絵柄とか表に見えやすいところではあまり共通項がないのですが、根っこの部分が一緒。どういう話が好きなのか。どこにプライオリティーを置いているのか。それがこういうところで現れる。
要はこういう話に二人とも弱いのです。
だってさ、手足折られて動けないはずなんだよ? 目だって潰されて見えないはずなんだよ? なのに。
フルートを助けて、ページをめくったら丸々1ページ、あんな笑顔だなんて。反則だ。それで「スフォルツェンド第一王子大神官リュート―死亡」って、あーた。フルートじゃなくても泣きますよ。
前述のブレーン的仕事というのも、ここの感覚が一緒だから。何を描くべきか、根っこの感覚が同じなので、僕が意見を言ってもナベ先生は聞いてくれるし、採用してくれる。
体験談から言っても、ゴールが別の人とだと、どうしても最後平行線になってしまう。一番描きたいものが理解してもらえないと、話にあやふやな要素が盛り込まれてしまって、むしろマイナスになってしまう場合もある。
そこが一緒だという確信があるのが、ナベ先生が僕を重宝してくれる理由で、僕がナベ先生を師と仰ぐ理由。
お父さんのエピソードを入れるかどうかは、意見が分かれますけどね(笑)。
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コメント
この巻収録のVSベース戦は、当時雑誌で読んで本当に衝撃を受けたものでした。
これまで読んできた漫画だと、得てしてベースのような「大魔王を除けばNo.1、つまり実質No.2」のタイプは、あまり強く描写はされないものでした。されたとしても、どこかに倒せる隙がありそう、とか、主人公が強くなればなんとかなりそう、みたいな感じの強さに落ち着くことが多かった気がします。
そして、ベースもこの時までは、サイザーに「(魔族化したハーメルに比べたら)赤子のようなものだ」とか言われたり、ヴォーカルが「戦闘能力だけならベースを上回るかもしれない」みたいな感じで、ベースも上記のような強さなのかなぁ、と思っていました。
この話を読むまでは。
この話までのリュートは本当に強くて、ドラムは一撃で沈めるし、それより強いはずのピックは(奇策を用いてですが)一瞬で倒しちゃうし、明らかに現代のハーメルパーティーよりも頭一つ以上飛びぬけて強くて、これならベースと接戦になるのかな、とか思ってました。
この話を読むまでは。
読み終わって、思わず心の中で叫んでましたよ。「こんな強い奴、どうやって倒すんだよ!!」と。
リュートの拳を何発も食らっても“無傷”(!)とか、それどころか無造作に受け止めちゃうとか、軽く払っただけでリュートの両腕ポッキリとか、それでも「身体は崩壊しかけていた・・・」とか・・・。
他所の漫画だったら完全にラスボスですよね、これ!もう、「強い」とか「弱い」を飛び越えて、『無敵』の域ですよね。
でも、これ、最初(2巻くらい)で言われていた通りの強さなんですよね。軍王はバケモノ揃いで、その頂点に立つベースはどんだけバケモノなんだよ、とか。
そして、似たような設定の敵キャラはそれこそ世に数多いますが、ここまでガッチリと当初の設定に忠実に描ききられた奴は、そうそういないんじゃないか、とも感じます。
なので、未だに私の頭の中では、『冥法王ベース』は他の漫画の強敵達とは一線を画する位置にいます。
ここら辺も、連載終了から10年近く経った今でも私がこの作品を忘れられない、一つの要因でしょうね。
(余談です)
そのベースでさえ敵わない強さを持ったオーボウは、本当にバケモノですよね。
っていうか、ハーメル、オーボウの強さ知ってるんだったら、ヴォーカルとかにも、「オーボウを魔族化させて戦わせ、魔力が切れかけたらフルートかハーメル(サイザーでも可)の血で蘇生させる」(名付けて“オーボウアタック”!!)かませばかなり楽になったんじゃぁ・・・。
「惨い作戦!」という意見もあるでしょうが、オーボウに爆弾咥えさせて投げたりフルートに寿命を削って肉弾戦させたりする方が多分鬼畜なので、今更、と私は思うのですが・・・。
(あくまでギャグです)
投稿: ごぜん | 2010/03/20 02:17
ナベ先生のそばにいて、一番すごいと思うポイントが、そういう表現を徹底することです。目一杯がっちり描く。
一般には、結構アイディア思いついた所で終わってしまうことが多く、それを絵でどこまで描くかという点ではあっさりしてしまいがちなのです。反省。
「これ、どうやって倒すんですか?」「さあ?」というレベルまで描くので、当然倒す時にはさらにアイディアが求められ、ボスはもっと強く描くことになり。
今ちょうど手伝っているシーンもそうなっていて、「すごいな、これどうするんだろう」と感心しているところです。
こうして話が膨らんでいき、読んでる人の想像を上回っていくのが漫画の理想だなあと思います。
投稿: かわせ | 2010/03/20 17:50
>今ちょうど手伝っているシーンもそうなっていて、「すごいな、これどうするんだろう」と感心しているところです。
おおっ、これはまた、気になる一言ですねっ!
やはりパート2の敵にもあれくらい強いヤツがいるのでしょうか。
それとも、最近の展開からいって、学園の猛者たち(カート・リッジとか)がいよいよその秘密のベールを脱ぐのでしょうかっ。
個人的には後者の方を期待しつつ、楽しみに待ちます!
・・・近くにヤングガンガン置いている店が中々無くなってしまった(最近転勤したばかり)ので、もしかしたら単行本待ちかもしれませんがっ(涙)。
投稿: ごぜん | 2010/03/21 23:01
>近くにヤングガンガン置いている店が中々無くなってしまった
ウチの近所のコンビニも全滅で、駅前の本屋まで行かないと無いです。
雑誌もたくさんあるので、棚の陣取り合戦も熾烈ですよねえ。
投稿: かわせ | 2010/03/26 09:55