いまさらハリー・ポッター
ハリー・ポッターを読みました。「不死鳥の騎士団」じゃないですよ。「賢者の石」。流行に後れること甚だしく(笑)。
流行に乗り遅れるのは得意ですから(笑)。へー、そんなに面白いんだー、と模様眺めしながら、はや4年とちょい。ようやく読んでみました。
こういう評価の定まったものを見るときは、勇気が要りますね。もし、面白いと感じられなかったらどうしよう、という。別に関係ない仕事についているなら、生活に支障はないんだけど、似たような仕事してるのにまったく理解できなかったら、自分の感性が大ピンチ。大丈夫かな、ドキドキ。
……大丈夫、面白い! と言うか、全部一気に読んでしまって、仕事遅れた! まずいじゃん、それじゃ(笑)。いや、ご飯時に何か暇を持て余して、チラッと読み始めたら、止まらなくて。
いろんな評判も聞いていたから、それについても理解できました。なるほど、そういう現象だったんですね。
いろいろ感想はあるんだけど、自分の仕事に関係ある所で言うと。巻末にある作者の言葉、「児童書を書いたつもりはない。自分が楽しめるものを書いた」。これがよかったんじゃないかなあ。
児童書を書いたつもりじゃなくても、子供に向けて書いた意識はあって、でもいわゆる「子供向け」の意識はなかった。これが大ヒットの要因の一つだと思うのです。表現は簡単に読みやすく、でも内容は子供相手だから、と単純にしていない。
大人相手の物は、心のどこかに「物書きとしてなめられちゃいけない」という意識が働いて、必要以上に複雑になる。表現も構成も技巧を凝らしたものになるし、書こうとする内容もテーマもひねりを加えたものになる。読み慣れている人はそれが楽しいんだけど、当然ついていけない人も出てきて、取りこぼしが起きる。
対して子供相手の物は、どうしても書き手の大人の気持ちが出てしまう。「子供はこういうものだ。こうであるべきだ」という意識が働く。子供をなめた子供騙しの物になるか、逆に説教臭くなる。そういう物には子供も敏感で、いまいち乗ってきてくれない。
この本にはそれがなくて、それが幅広い年齢層、誰でも読めるという状態に繋がっているんじゃないかと。表現としては平易だし、展開としては王道だし、でも書いてある内容も簡単かと言うと、例えばスネイプ先生の気持ちなんて、子供向け、と思っていたら書かない様な複雑な心境。
当然、その心持ちになりさえすれば誰でもヒット出来るかと言うと、違うのですが。シンプルかつ王道な物をちゃんと書き切るには、むしろごまかしが効かないから、確かな表現力と細やかな心配りが必要で。なめてかかって類似品を作ると痛い目にあう。
でも、自分もこういう風に描けたらなあ、と思います。頑張ろう。
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