ポリシー
漫画にはポリシーが必要だ。と、書くとなんか大袈裟だな。もっといい言葉があるような気がするんだけれど。ポリシー、主義主張、思い入れ、こだわり……。何かそんなものが。
かっこつけて言ってるんじゃないんですよ。むしろ読者の立場からして。そういう物がないと、選べないよね、という話。
どんなジャンルでも黎明期って、作るだけでぼろ儲け出来る時期がある。需要に供給が全然追いついてない時は。そのうち市場が成熟してくると、消費者の目も肥えてくるし、ライバルも出てくるから、たくさんの物の中から選ばれるようになっていく。
漫画はもう、そういう成熟期に入っている。そういう状況では、他との差別化をしっかりしてないと、選ぶほうは選びようがない。そのときに必要なのが、ポリシー、もしくはこだわりと呼ぶべきもの。
漫画家はシンプルなんですけどね。一生懸命描くとなぜかこうなっちゃうな、仕方ないか、好きなんだし描きたいんだから、と自覚して開き直れば自然に出てくる。
自覚して開き直るのが難しいですけど。自分の姿を客観的に正確に捉えるのは、なかなか。特に若い時は背伸びして、かっこいい漫画を描きがちで。向いてればいいけど、向いてないのに無理してると、仕事自体上手くいかない。
僕もそれで散々苦労を。大変ですよ、自分探しの旅。ここが求めていた場所なのかも、まだ分からないし。でも以前よりは、のびのびと描いてる自覚はある。ここが終着駅だといいなー。
ただね、もっと難しいのは雑誌の方だなと思うのです。漫画家は自分一人だから単純だけど、雑誌となると大勢の人が関わるわけだから、きっちりとした共通認識を作らないと迷走する。それがないと数字に振り回されてしまう。
「こっちのほうが売れそうだから」の何が悪いかというと、実は既存のお客さんを切り捨てることに繋がるから。今、その雑誌を読んでるお客さんは、その雑誌がいいと思って買っているのだから、路線変更なんかされたら好みじゃなくなってしまう。
その路線の延長線上、もしくはその周囲で、ちょっと違うものを試すならついていけるけど、180度方向転換なんかされたら、もう読めない。でも結構現場はその意識が希薄で。数字の向こうの人の顔が見えていないというか。
実際そういう悲しいエピソードを知ってるけど、書かない。変わった後のその雑誌が好きな人も、大勢いるだろうから。でもやっぱり、長い目で見るとマイナスですね。
そういう編集部はどうしても流行に左右されるから、路線変更が一回や二回じゃきかなくなってしまう。新しいお客をちょこっとつまんじゃ捨て、ちょこっとつまんじゃ捨てという状態に。その雑誌もまた路線変更してるしな。
流行の波を後ろから追いかけたって追いつくもんじゃない。波に乗るなら沖に出て、じっと待たなきゃ。そういう我慢が出来る強さを支えるのが、ポリシーや、こだわり。
そういう漫画が読みたいですね。そういうのがたくさん出てくれば、中にはばっちりもろ好み! という作品もあるだろうし。
でもな。人は弱いものだから。
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