ハーメルンのバイオリン弾き 12
ハーメル回顧録の12。前回まではカテゴリー、ハーメル回顧録でどうぞ。
「点描」というテクニックがあります。細かい点々を打って、ほんわかしたムードを醸し出すのに使ったりします。「おどろ」というテクニックもあります。短いカケを使って、その名の通り、おどろおどろしい雰囲気を作るのに使います。
どちらも最近見なくなったテクニックなのですが……。得意なんですよね、オイラ。
ナベ先生のアシスタントの使い方の特徴は、その人の得意な物をとことんやらせる、というもの。普通そうじゃないの? と思うかもしれませんが、徹底しています。
この前の巻辺りから、溝渕さんがスタッフに加わっているのですが。溝渕さんは最初から達者な人だった。それに気付いたナベ先生、溝渕さんにどんどん難しい絵を回す。特に魔物の類や、グロ系の死体の山。
この巻ではまだ別の人が描いてますが、この後溝渕さんは「死体アシ」として、いやーな絵ばっかり描く羽目になるのです。そしてオイラは。
前述の点描やらおどろやら、とにかくこまごました物。カケアミ、ベタフラ、後多かったのはギャグ背景に咲き乱れてる花! サイザーが来てから、ライエル妄想大爆発だから、やたら描いたなー。
この巻で点描というと、例えばフルートとホルン様の周りに、ぐるーっと打ってるやつ。あれ打つの辛いんですよね。ひたすら単純作業で黙々と。なんかトランス状態になってくる。点描マシーンという感じ(笑)。
得意な物を徹底してやらせるというのは、作業効率と品質の維持という点ではいいのですが、それが漫画家を目指してるアシにとっては負担だったりしたのです。月の半分仕事に入ってて、得意と言えば聞こえはいいけど、同じ物しか描いてない。これじゃ上手くならないんじゃないかと、気持ちばかり焦る。
オフに練習すればいいんだけど、オフは持ち込みのネームで手一杯になってる。人の仕事で練習させてくれとまでは言わないけど、まったくチャレンジできない状況は、苦痛でした。あの頃、溝渕さんがうらやましかったなー。
しかも、この後ほんわかしたムードに使えるトーンがいろいろ発売されて、点描なんか死滅したテクニックに。ナベ先生の仕事場だけで通用する、「ひろいら」というトーンの呼称があります。「浩要らず」の略。ひどいでしょ(笑)?
おどろとかナワアミとかも、もう見ない。散々描かされたのになー。悔しいから自分の漫画で使うか。
さて、ライエル妄想大ブレイク、いかがわしいおピンク妄想(笑)の影で、登場しています、オルゴール。ハーメルとライエルの過去を暴くこの悪役。ドラムがやられ、サイザーが寝返って、弱体化した魔界軍王サイドを補強するために登場したわけですが。
このキャラには実は隠された出生の秘密が……。以下次号。
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